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■住宅設計の基本的な考え住宅を設計するという事はクライアントからの要望、敷地の状況、デザインイメージ、安全性、快適性、経済性、ランニングコスト、将来の可能性、そういったいろいろな要素の中からそのご家族にとってより重要なキーワードを順序立てて再構成する事から始まります。それらのキーワードを基に具体的に実際の計画を考えるのですが、最初はまさに試行錯誤の連続となります。最初は良くわからないものが設計を進めていく過程で「本当に必要なもの」が見えてくるものです。そうなると実際のデザイン作業も加速度的に進み出します。その作業をクライアントと一緒になって行う事が住宅を「創る」という事だと考えています。アトリエ・ヒューテックでは住宅設計に於いて、「いいものを創り、それを長く使いたい」 というテーマを掲げています。住宅は皆さんの生活に寄り添ったものであると同時に、社会財産でもあります。良質な住宅を創り維持する事は大変意義のある事と考えています。その為に実際に設計する上で具体的に以下の5つのコンセプトを大切にしています。 |
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1. 主室(LDK)をしっかり作るまずなんと言っても主室(ここではリビングやダイニングを指します)で家族と共に多くの時間を過ごして頂きたいと考えています。その為にはそこに居たくなる様な空間を作る必要があります。また、同時に多目的に使う事が出来る様な広さや形状も必要です。それを作る事が出来ればその住宅は、半分は成功したと言っても良いのではないでしょうか。敷地を見に行きますとまず第一に主室をどこに配置し、その場合の主室のテーマは何かといった事を考えます。それがいくつかの可能性がある敷地は「良い敷地」と言えるかもしれません。プライバシーや採光が確保出来るようであれば1階を主室とし、外部空間との連続性をまず考えます。その次に高い天井や吹抜けの可能性を考えます。階段の位置もこの場合は重要です。主室の中にとるのか外に分離してとるのか判断が分かれるところです。2階が主室になる場合は、プライバシーの確保が最重要項目であったり、要望として採光やそこから見える景色が特徴としてある場合でよく採用します。外部空間(例えばバルコニーやテラスなど)との連続も必要に応じて検討します。この場合、階段の位置はそれほど重要ではありません。 |
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庭と連続したリビング |
リビングの吹抜けと透けた階段 |
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2. 一体となった内部空間を心がける家全体を細かく区切らずに出来るだけ一体となった空間を作りたいと思います。理由の1つとしては、内部の空気を動かす事が容易という事があります。空気を動かす事は、ここでは「換気」や「空調」という言葉と同じと考えてください。必要な所から外気を取り入れて建物の中を計画的に循環させ、最終放出口を考えて屋外に排気します。このように計画的に考える事で出来るだけ効率的に空気を循環させる事が可能になり、それはとても大切な事です。1階に主室がくる場合、出来るだけ吹抜けや高い天井を設けるようにし、2階と空間が繋がるように計画します。高断熱化された住宅では、吹抜けを設ける事は、快適性や省エネ性を損なう事はありません。また、家族間のコミュニティの観点からも一体化された空間はおすすめです。ワンルーム的な住宅は文化度の高さを感じさせます。例えば、ダイニングでお母さんが食事を作りながらお子さんの勉強を見ている。その様子を肌で感じながらお父さんはリビングの一角でお仕事をしている。その時にお互いが相手をケアする事がコミュニティの基本となるからです。家族全員それぞれが個室で生活している状態では、なかなかコミュニティ意識というものが育ちません。個室も最低限のプライバシーを確保しながら、ある程度気配を感じる事が出来るように考えます。これはすべての皆さんに共感頂ける方法ではありませんが、一つの考えとして提案させて頂きます。 |
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吹抜けによって連続したリビング |
LDKの一体感を妨げない軽い階段 |
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3. ファサードを大切にする長く使う為には外観のデザインも重要だと考えています。周囲から一番よく見える外観(ファサードといいます)のデザインで、その建物の「顔」とも言うべき物です。シンプルで美しいデザインにはその建物に対する「誇り」「愛着」が生まれます。そうなればメンテナンスにも力を注げるようになり、「好循環」が生まれます。使う仕上げ材料は「素材感」を重視します。それは建物の長い寿命の中で劣化を感じさせない材料だからです。良い素材は長い時間と共に変化し、「味」として重みを増していきます。ファサードのデザイン確認の為に我々の事務所では模型を作ります。1/100程度の小さい物でいくつかスタディした後、1/50の模型で最終の確認をします。時には中に照明を入れて夜間の見え方を確認したりもします。 |
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ボリュームと開口部によるリズミカルな外観デザイン |
コンクリートの素材感を活かした外観デザイン |
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4. エコロジーを重視した「器」 としての高い基本性能エネルギーの消費を抑える事を目的に断熱性、気密性能の向上に努めました。その結果、家の中に気温のムラが少なく、「快適性」が大幅に向上する事に改めて気づきました。開口部の性能向上を含めた全体の断熱性能をあげる事、気密性能を高め「すきま風」をなくす事、これらによって出来る高断熱高気密住宅は、たとえそれが温暖地にあったとしても非常に価値があります。結果的に、少ないエネルギーで家全体を「寒くはない」、「暑くはない」程度に維持し快適に過ごす事が出来ます。パッシブデザイン(*1)も積極的にデザインに取り入れます。太陽の熱をコントロール(夏は遮り、冬は取込む)しながら有効に活用します。特に電気代の大きな比重を占める冬場の暖房費削減のため、日射量の取得という考えは重要です。風を考えた開口位置や開口形状も大切です。その為にその場所ではいつどのような風が吹くかも調べます。(特に夏場の夜に吹く風)ただし、これは全ての敷地で採用出来る方法ではありません。木造住宅でも基礎はコンクリートになります。コンクリートはその物性として極めて熱容量(*2)が大きい材料です。そのため、我々としてはその特性を生かし基礎を室内化して蓄熱体として活用する事を考えます。木造住宅をコンクリート住宅のように高気密化すれば、湿度の問題を考えなくてはなりません。快適性は湿度と密接に関連しているからです。室内の湿度を安定させるため、内装材に「呼吸する自然の木」や調湿性能のある「塗壁」などを使いたいと考えています。フローリング、天井材、デザインの一部としてのアクセントの壁などに使う事を提案致します。その結果、夏は余分な湿気を吸い込み、逆に冬場に放出する調整機能が整います。以上が「器」としての高い基本性能の考え方ですが、それらを数値化して明確に確認する事が可能になりました。我々の事務所では、建物の断熱性能(U値*3)、建物から逃げる熱量(Q値*4)といった数値を算出して確認する事で、どのくらいの熱量が必要かが分かります。結果、ランニングコスト(電気代)の確認も出来ます。このように設計段階でエネルギーの事を考え、予算配分のバランスやデザインにつなげる事が目的です。 |
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*1 パッシブデザイン |
:太陽光、熱、風、材料等の自然の持つ力を活かして,熱や空気の流れを制御し、快適な空間をつくるデザイン |
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*2 熱容量 |
:物体の温度を1℃上げるのに必要な熱量。数値が大きいほど暖まりにくく冷めにくいため、蓄熱性能が高い。 |
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*3 U値(熱貫流率) |
:断熱材、開口部、外壁材料の仕様等によって断熱性能を評価する値。数値が小さいほど断熱性能が高い。 |
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*4 Q値(熱損失係数) |
:屋内外の温度差が1℃のとき、1時間に建物全体から逃げる熱の割合。数値が大きいほど屋内の熱(冷暖)が多く逃げる。 |
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5. 長く維持する為の仕様と対応建物を長く維持する為には何といっても躯体が重要です。躯体さえしっかりしていれば仕上げや設備を変えて使い続ける事が出来るからです。コンクリートの住宅では我々の事務所では、壁式構法を比較的多く採用していますが、この場合、大きな地震での倒壊事例はありません。木造では建築基準法通りに作っても過去に大地震で倒壊した事例は幾つもあります。そこで木造住宅では特に躯体の高性能化は意義の有る事と考えます。合理的な架構は当然ですが、さらに耐震等級2(建築基準法の1.25倍の地震力に対応)以上の付加基準の採用を必ず検討します。仕上げに関しては機器自体長く使う為のデザインに即した材やメンテナンス性能の高い材料を検討します。「時間が経つと味が出る」といった材料が望ましいです。設備機器に関しては長く使う事を前提に作られておりません。そこで取り替えるという事を前提に、出来るだけ安く簡単に取り替える事を主体に検討します。又、初期の家族形態に即して導入した設備や仕様も家族構成の変化と共に変化する事があるかもしれません。そういった対応(可変性)が可能である事も重要です。メンテナンスに関しては、基本的に予防という考え方で対応しています。何かあってから対策を講じるのではなく、事前に確認しながら維持していくという考え方です。実際には、竣工時に建物の取扱いの説明をしっかり行います。具体的な機器の使用方法の説明はもちろん、導入してほしい設備機器、日射コントロールの方法、換気の方法、注意事項などをご説明します。またこの時に、建物の長期修繕計画といった長きに渡る修繕の基本的な考えをお伝えします。そしてそれをサポートします。竣工後1年がすぎた時点で1年点検を行い、不具合が無いか全ての項目を確認します。ここで出た不具合箇所に関しては、施工業者さんと共に修繕方法を考えその作業を監督します。将来家族構成の変化による増改築や一般的な修繕工事に関しては、手元の資料(もちろん竣工時には建築主様にも渡してあります)がありますので随時相談に乗らせて頂きます。 |
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